塗料1缶ごとの環境負荷を「数字で開示」へ――菊水化学工業、遮熱ふっ素塗料「水系ファインコートフッ素遮熱BMBシリーズ」でEPD認証を取得
リード
遮熱塗料を選ぶとき、反射率や耐用年数のカタログ値は見ても、その塗料をつくって運んで廃棄するまでにどれだけCO₂が出るのかまで確かめる機会はまだ多くありません。菊水化学工業株式会社は2026年5月7日、外装用の遮熱ふっ素塗料「水系ファインコートフッ素遮熱BMBシリーズ」で環境製品宣言(EPD)の認証を取得したと発表しました。植物由来原料による低炭素化と、環境負荷の数値開示。二つを組み合わせた取り組みの中身を整理します。

EPDとは何か
EPD(Environmental Product Declaration/環境製品宣言)は、原材料の調達から製造、輸送、使用、廃棄・リサイクルまで、製品のライフサイクル全体の環境影響(CO₂排出量など)を算定し、国際規格ISO 14025に基づいて第三者機関が検証・公開する仕組みです。
今回のEPDは、ノルウェーのEPD運営機関が運営する「EPD-Global」に登録されています。登録日は2026年4月14日、有効期限は2031年4月13日、EPD IDはNEPD-11494-11494-2です。
なぜ今、塗料でEPDなのか
菊水化学工業は取得の背景として、建築物のライフサイクル全体で環境負荷を評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)の重要性が建設・不動産業界で高まっていることを挙げています。国土交通省でも建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価を促す制度の検討が進んでおり、2028年度以降の制度化も視野に議論が進められている、と同社は説明しています。製品の環境負荷データを先に整えておくことで、設計事務所やゼネコンの取り組みを支えたい、という狙いです。
建物全体のCO₂を積み上げて計算するには、使う材料一つひとつの数値が要ります。塗料は建材のなかでは目立たない存在ですが、その数値が第三者の検証つきで手に入るようになるのは、設計側にとって小さくない変化です。
製品の特長――バイオマスバランスと遮熱・耐候性
このシリーズは、塗料の主成分である樹脂(エマルション)の製造段階で、化石由来のナフサとともに植物由来のバイオナフサを使う「バイオマスバランス(BMB)アプローチ」を採用しています。投入したバイオ原料の分のCO₂削減量を一部の製品に割り当てる手法で、同社によれば樹脂の品質・性能は変わらないとしています。
製品ページでは、BMBエマルションの採用によって1缶あたり10kg前後のCO₂を削減すると記載されています。遮熱性については、近赤外線を反射しやすいチタン系黒色遮熱顔料を使って室内への熱の伝わりを抑えるとしています。樹脂は無機有機ハイブリッドのふっ素樹脂で、親水化による低汚染性や防藻・防カビ性、透湿性も特長に挙げられています。
外装用の「水系ファインコートフッ素遮熱 BMB」の期待耐用年数は18〜22年(艶有のみ)です。同社はこれを「塗替え時期の目安であり、塗膜の耐久性を保証する年数ではない」と注記しています。シリーズには屋根用の「水系ファインコートフッ素遮熱 屋根用 BMB」もあります。
同社は今後もEPD認証製品を順次増やしていく方針を示しています。
ECOTの視点
遮熱塗料の価値は、夏の暑さをどれだけ和らげるかだけでは測りきれません。何年その性能が続くのか、塗り替えまでにどれだけの資源とエネルギーを使うのか。そこまで含めて考えてはじめて、環境にやさしい塗料かどうかが見えてきます。
ECOT(一般社団法人 日本エコ塗装認証機構)は、遮熱塗料などの性能・耐久性を客観的な資料に基づいて確認する団体で、グリーン購入法の高日射反射率塗料の判断基準についても、耐久性やライフサイクルコストを含めた評価の必要性を提案してきました。
今回のEPD取得は、製品の環境負荷をライフサイクル全体で数値化し、第三者の検証を経て公開するという点で、こうした考え方とよく響き合う取り組みです。遮熱性能や耐久性のデータと環境負荷のデータがそろって開示されるようになれば、塗料選びはもっと根拠のあるものになっていくはずです。同様の開示が業界に広がっていくことを期待しています。
※本記事は公開情報をもとにした二次情報の紹介です。ECOTが本製品を認証・推奨・評価したものではありません。EPDは環境負荷の算定・開示に関する仕組みであり、遮熱性能や耐久性を認証するものではありません。製品の仕様・性能の詳細はメーカーにご確認ください。
参考文献
- 菊水化学工業株式会社「環境製品宣言(EPD)認証取得のお知らせ」(2026年5月7日) https://www.kikusui-chem.co.jp/news/2026/company/981.html
- EPD-Global(EPD-Norway)「水系ファインコートフッ素遮熱 BMB シリーズ」(NEPD-11494-11494-2) https://www.epd-global.com/epder/byggevarer/takbelegg-membraner/nepd-11494-11494-2-shui-xifainkotofu-tsu-su-zhe-re-bmb-shirizu
- 菊水化学工業株式会社「水系ファインコートフッ素BMBシリーズ」特設ページ https://www.kikusui-chem.co.jp/recommend/bmb/
- 菊水化学工業株式会社「水系ファインコートフッ素遮熱 BMB」製品ページ https://www.kikusui-chem.co.jp/products/post_55.html
- 菊水化学工業株式会社「水系ファインコートフッ素遮熱 屋根用 BMB」製品ページ https://www.kikusui-chem.co.jp/products/post_57.html
- 一般社団法人 日本エコ塗装認証機構(ECOT)公式サイト https://ecot-japan.com
(参照日:2026年10月2日)


